がらがらっ!
「よう、真琴。一緒に風呂入ろうぜ」
「あ、祐一〜♪もう、今日は遅いじゃないのよぅ」
「すまんすまん。名雪の隙を付くのが大変だったんだ。見つかったら大変だからな」
「ん…じゃ、ちょっと待って。出るから…」
ざば………
「…おお。最近日に日になんかいい感じに成長していっている気がするな………」
「もうっ、あんまりじろじろ見ないのっ………ほら、早く入って」
ちゃぽ…
「ふう〜、やっぱ風呂は気持ちいいな…。…さ、真琴、来い」
「ん♪」
「今日は外で遊んでたからな…念入りに洗ってやるぞ」
「んむ…あんまり、ヘンな事ばっかりしないでよっ」
「分かってますって………おおっと」
「うきゃっ!?」
「すまん、石鹸で滑った」
「うぅ〜…」
「さあ、真琴はもう大人だな!?」
「うん♪」
「というわけでエロ本買って来い」
「ふふ…そろそろだと思ってちゃんともう買ってきてあるわよ〜」
「何!?お前って奴は…」
がさ………
「どう?祐一が好きそうなのちゃんと選んできたの」
「おおおおっ!!これはっ!?ナース!看護婦さん!かんご…げふっ」
「ああ、もう、興奮しすぎよぉ」
「でかした真琴!さすがお前は分かっている…最高だ」
「あったりまえよ〜。真琴は祐一の事なら何でも知ってるもん♪」
「ほら…真琴。プレゼントだ。きっと似合うだろう…是非着て欲しい」
「うん………あ、これ…」
「どうだ。可愛いだろう?」
「うんっ♪こんな紺色のメイド服着てみたかったんだぁ…ありがとう祐一♪」
「ふふ、ちゃんと真っ白でふりふりのエプロンとヘアバンドも揃えてあるからな」
「うわぁ…嬉しいっ!今すぐ着るわねっ」
「そうそう。今度は首輪も注文しようかと思ってるんだが、どうだ」
「ホントにいいの!?すごく欲しい〜っ。祐一大好き♪」
「ごほっ、ごほ………うぅ…ずっ」
「うぅん…辛そうね。それじゃ、真琴が愛情たっぷりのおかゆを作ってあげるっ」
「………すまんな、頼む」
「それじゃ…」
ささっ
「待て………何故、エプロンをつけるのに下に服を着ている必要がある?」
「え…あ、そうね。うっかりしてたわ」
いそいそ。
「これでいいのよね?」
「うむ。大変結構なお手並みで。…ときに、その場でくるっと1回転」
くるっ☆
「………………………ぶはッッ」
「ゆ、祐一っ!?…祐一が血吹いて倒れちゃった〜!」
「………という感じだな」
「本物の変態ですか、あなたは」
延々数分に渡って語りつづけた祐一にぶつけられた一言は、まさしく真理そのものであった。
「ふ…まあ、天野に理解できないのも無理はない。これはいわば男の美学というものだからな………」
「勝手に男の代表みたいに語らないで下さい。男という種に対する冒涜です」
「………はい」
完全に言い切った言葉に手痛い反論を喰らって、寂しく引き下がる祐一。
「…でもなあ…空からお菓子が降ってくる、なんてのよりはよっぽど嬉しい話だと思うけどな…」
それでも悔しいのでぽつり、と少しだけ食い下がってみる。
運の尽き。
「相沢さんのその汚れきった欲望が叶ったとして喜ぶのは相沢さんだけです。お菓子が降ってきたら子供たちは喜ぶでしょう」
「よ、汚れきった欲望て…」
「もし願いが叶うなら、と一言聞いただけでそこまで具体的に出てくるのは大したものだと思います。よほど普段から妄想癖が強いのですね」
畳み掛けるような攻撃に、祐一はなすすべもない。
だいたい、一部真実を確実についているところがある。
「そうやっていつも貴方は想像の中で真琴を汚していたのですね。目の前の真琴と普通に話しながらも頭の中は黒く渦巻く欲」
「それ以上言うな。頼む。ごめんなさい。なんというか俺が悪かったから天野もそこから先言うのはやめておいてくれ。天野自身のイメージに関わるというか」
半泣きになりながら懇願する。
美汐は、表情を変えないまま、ただぴたりと言葉を止める。
「…私の事も、そんな厭らしい目で見ているのですか」
と思ったら、心底嫌そうな表情に変わって言う。
祐一は慌てて首を横に降る。
「断じて、そんな事はないっ」
「そうですよね。もしそうなら明日にでも転校するところです」
「そこまでっ」
焦る。
「と、というか、別に真琴の事だってそんな目で見ているわけじゃないからな!?さっきのは、こう…こうだったらそれは素晴らしい日々、みたいな理想を語っただけで」
「相沢さん」
「…はい」
「私が責任持って、真琴に伝えておきます」
真琴は、一つ大切な勉強をしました。
おしまい。【オチなし】
【あとがき】
えーと…
実は最初「ともだち。」の中に入れる予定のエピソードでした(爆)
やめておいてよかった、と心から思います(^^;;
たまにはこういうのも…許してください〜