速い。
 1周400mのトラックを、そこは走るための場所だから気持ちよく走るんだと言わんばかりに軽快なペースで駆け抜ける。
 いや、軽く見えるのは遠目にそう見えるだけで、その目をしっかりと見ていれば、真剣に全力を出して走っているということはよく分かる。一緒の家に住んでいる自分でさえ今までほとんど見たことの無いような表情だ。
 実際、名雪は速かった。他を圧倒していた。
 そもそも体育祭の400m走という競技に、陸上部の人間が参加してもいいのか、と疑問を感じずにはいられない、あまりに明確な差だった。いや、それにしても、ここまで速いものだろうか――?
 呆気にとられている間に、名雪はもうゴールテープを1番で切っていた。
 歓声があがる。方々で、名雪を称える声。同じクラスだけでなく、敵である他のクラスの生徒からさえも。
 名雪は、そんな周囲の声に何も気付かないように、ただ一点だけを見て、晴れやかな笑顔を見せていた。……勘違いでなければ、名雪が見ているのは。
 思っているうちに小走りでそちらのほうに走っていく。――もとい、走ってくる。
 確かに、俺のほうに向かって。
「ゆーーーいちーっ♪」
 何の遠慮も無い声で、名前を叫ぶ。思わずぎょっとする。まだ多くの生徒が名雪のほうに注目しているというのに。
 周囲の視線には全くおかまいなしに、名雪は一直線に向かってきていた。
「ね、ね、一位だよ一位取ったよ〜」
「わ……み、みりゃ分かるから落ち着けってほらまだ競技終わったばっかりで視線がわっ!?」
「えいっ」
 わざわざ掛け声もつけて、小走りの勢いのまま椅子に座った俺にそのまま覆い被さってきた。がばっと。躊躇無しに。周りにはもちろんクラスメイトが普通にいるのに。
 ふにゅん、と顔に柔らかい感触。名雪が立って屈んでいて、俺が椅子に座っていることから必然にできあがるこの位置関係。
 ひざに当たるフトモモの感触も、ちょっと筋肉質で、だけど柔らかい――
「って、こらお前なっ……」
 慌ててその体を跳ね除けようとするも、椅子に座っていては抵抗などしようもない。名雪が自分の意志で離れない限りもうこの体勢から逃れる事は出来ない。
 焦る。
「ね、約束通り一位取ったよ。ご褒美♪」
「…………は、はい?」
 名雪の声があまりに近距離から聞こえてきたために、言葉の中身以前に声そのものにドキっとする。いや、声だけではなく、もはや視界いっぱいを塞ぐほど近くにある顔にも。
 内心で、というかおそらく外面にもバレバレなくらい動揺する俺をよそに、名雪はとても嬉しそうに言ったのだった。
 約束。
 ご褒美。
 ……正直、全く身に覚えが無かった。
 だいたい体育祭の400m走なんて出場したら一位を取るに決まっているのだ。そんな分の悪い約束をするとは思えないのだが――
「……ね?」
 にこっ。と。
 あまりに無垢な笑顔。
「あ、ああ、そうだったか……それで、えーと、何が欲しいんだっけか……?」
 もはやその自分の言葉を紡ぎだしたのは脳ではなかった。脊椎反射のようなものだった。
 記憶にあるとか無いとか、そんなものはどうでもよかった。
 目の前の名雪が求めている。それだけが事実だった。
「何言ってるの、祐一?」
 そんな俺の心を知ってか知らずか……おそらくはどっちでもいいのだろうが、名雪はずい、とさらに体を寄せてくる。もはや完全に抱きすくめられている格好だ。
 体操服のためほとんど露出してしまっている脚の感触は、あまりに危険で。
「わたしが欲しいのは、祐一だけだよ――」
 言葉が終わるか終わらないかのうちに、名雪の口は閉ざされていた。
 いや、正確には、俺の口のほうが塞がれていた。名雪の唇によって。
 2人ぶんの体重を椅子が懸命に支えている。きし、と少し木の悲鳴が聞こえたような気がした。
 どれだけの長さ続いたか分からないこのキスは、柔らかくて、自分の体ごと溶かしてしまいそうだった。気持ちよかった。すでにもう周囲の事なんて見えなかった。
 このままずっと止まっていられたらどれだけ幸せなことか――



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 夢には自分の願望が表れる、というのは非常に有名な説であるが。
「マジか……」
 日の光が布団の上に差し掛かっている。角度からすると、もう昼前という時間か。
 白い天井を見上げて、一人恨めしそうに呟く。
 夢の内容もさることながら、目が覚めてまず、夢だったのか……と少し落ち込んでしまった自分にげんなりした。何を期待しているのか。
 ベッドからまだ起き上がらないまま、祐一はぐったりと脱力する。
 夢に名雪が出たのは初めての事ではなかった。以前にも、夢の中の名雪が恋人として現れたこともあった。その時も起きてから今みたいに自己嫌悪に陥ったものだが。

 ……とうとう、キスまで。
 しかも、とても恥ずかしいセリフまで言わせて。

 無論、現実には、名雪とは全くそういう仲では無い。それだったら何も落ち込むこともないし、それ以前にこんな夢は見ないだろう。
 何でもない間柄だからこそ、家族兄弟みたいな付き合い方をしているのが現実だからこそ、自分の夢がとても浅ましく感じる。普段笑いあいながら話している相手を夢の中で勝手に自分のものにしてしまっている事を。
 別に普段から決してそういう目で見ているつもりは無いのだが。
 いや、もしかしたら、健全な高校生男子としては無理の無い事なのかもしれない。実際には家族ではない女の子と一緒に暮らしているのだ。すぐ近くの部屋で寝ているのだ。そして学校でも同じクラス、と、通常ではありえないくらいずっと顔を合わせているわけで。
 加えて、水瀬名雪という少女は、贔屓目無しに――美少女だ。
 久しぶりに再会した時にも驚いたものだが、同じ家に住んでいるとそれ以上に色々見えてくる。いつもの、どこかぼーっとしているような顔も、どこまでも無防備な寝顔も、風呂上りで上気した頬も、濡れた髪も、冷たい手も、短いスカートから伸びている脚も――
「……まず」
 考えているうちに、どんどん想像が膨れ上がっていく。いとこの少女のイメージが次々に頭の中を支配していく。
 完全に、ハマった。
 ましてあんな夢の後だ。一度堤防を越えた波は、そう簡単には収まらない。
 名雪の体の感触が、まだどこかに残っているようで。
 罪悪感と戦いながら。
 ……とりあえず、まだしばらくベッドから起き上がれそうになかった。



「おはようございます」
 やっと落ち着いて、着替えて、1階に下りていったのは30分も経った後だった。
 つくづく、学校の無い日で良かったと思う。3日前に終業式を終えて、春休みになっていた。
 ……どこからも、返事は返ってこない。
 叔母は――”秋子さん”はいつも通りもう仕事に行っているのだろう。相変わらず何の仕事かすら知らないが。
 名雪は出かけたのか、やっぱりまだ寝ているのか……
「……って。そうだ。いないんだ」
 考えているうちにようやく頭がすっきりしてきて、思い出す。
 名雪は昨日から陸上部3泊4日の合宿に行っていた。明後日まで帰ってこない。
 少しホっとする。なんとなく、今は顔を合わせるのは辛かった。というより……夢の事、朝の事を思い出して顔に出てしまいそうで怖かった。
 朝ご飯はテーブルにもう準備されていた。一人分だ。
「……いただきまーす」
 用意されているおかずをレンジで少し温めて、いつも通り食パンを取り出す。
 トースターで3分半。
 しばらく、電子的な音だけが部屋に響く。
 ぴー、ぴー、ぴー。
 パンが程好い焦げ目をつけて焼きあがる。マーガリンを塗りつける。
 口元に運ぶ。さく、と気持ちいい食感。今日も絶妙の焦げ具合。
「……ん」
 別に、一人で朝食を取るのが久しぶりというわけでもない。名雪が家にいてもこれくらいの時間だと寝ていることも多かった。だから、特に寂しいとも思わない。まあ、こんな時だってあるだろう。
 さく、さく。
 食欲をそそる香りが鼻を気持ちよく刺激する。
 美味しい。
「……んー……」
 がたん、と静かに椅子を立つ。
 なんとなく、なんとなくだった。特に意図するものがあったわけではないのだが。
 冷蔵庫を開ける。
 ジャムを取り出す。甘いものはあまり好きではないこともあり、普段は使うことはないのだが。
 また一枚食パンを取り出して、取り出した深い紅色のジャムをたっぷり塗りつける。
 苺のジャム。
 ふにゃ、と柔らかいままのパンを口に運ぶ。甘い。
「結構、美味しいかもな……」
 名雪がいつも食べている味。手作りジャムなだけに、この味を知っている人はそう多くは無い。今までちょっともったいないことをしていたかもしれない。
 名雪と一緒に同じジャムのパンを食べる――そんな朝。いいかもしれない。なんとなく、今さら恥ずかしい気もするが。
 ……なんて。
 そんな情景を想像していたらまた。
『わたしが欲しいのは、祐一だけだよ』
 蘇る。
「……ダメだ」
 手に最後のひとかけらを残したまま机に突っ伏す。もう脳が完全に変なスイッチ入っているみたいだ。
 思い出した幻想の声に、この広い一人きりのダイニングに来て、今さらながら滅茶苦茶に恥ずかしくなって。
 顔を上げる事ができない。
 どうしてあんな夢を見てしまったんだろうと、改めて後悔する。
 名雪がいなくて本当に良かった。この様子じゃ目も合わせることが出来なかっただろう。情けないことだが。
 はむ、と最後の一口をなんとか口に運ぶ。なんだか味が薄くなっている気がした。
 甘い香りを口に残しながら、遅い朝食を終えた。



「や、相沢君」
「祐一さん、こんにちは♪」
 美坂姉妹とばったり出会ったのは、なんとなくヒマに飽かせて出かけた小さな本屋さんで。
 こうして2人並ぶと――本当に似てない姉妹だな、なんて思ったりする。
「……やっほ」
「何よ、もっと元気よく返事しなさいよ。せっかく学校でも評判の女の子2人が声かけてるのに」
「……評判? 個性的な髪型グランプリ優勝の事か?」
「うわー。ねえ聞いた栞? 女の子にこんな事言うオトコがいるわよ?」
「名雪さんもいい勝負だと思うけどなー……」
「いや論点はそっちじゃなくて」
 香里がびし、と、手を並行に動かして空中で何かを移動させるようなジェスチャーを見せる。
 なかなかサマになっていた。
「まあまあ、仕方ないよお姉ちゃん。祐一さんは名雪さんのコトしか目にないんだからー」
「それはそうね」
 あっさり。
 がく、と脱力する。
「……だからっ、お前らっ、なっ」
 一瞬動揺して立ち読みしている雑誌を落としてしまいそうになるのをなんとか堪える。
 落ち着け。
 何も、この2人がいちいち名雪の事を持ち出して、何かとネタに使うのは今に始まったことではなかった。……むしろ、この2人が原因で変に意識し始めてしまったのではないかと思えるくらいの日常茶飯事だった。
「何度も言うが、俺は別に名雪」
「そういえば名雪、昨日から合宿で家にいないのよね」
「あ、だからこんな寂しそうな目をしてるんですね、祐一さん」
「話を聞けっ!!」
 いつもの事ながら、この姉妹が2人揃うともう完璧無敵だ。
 寂しそうな目、と聞いて少し”まさか本当に?”とドキっとした事を誤魔化すために少し大きめの声で叫んでおく。
 ……そんな祐一を見て香里のほうがフっと妖しく笑みを浮かべたのは、気にしない方向性で。

 なんとなく居辛くなって(当たり前だが)、本屋を出た。
 美坂姉妹も当然のように後に続いて出てきた。
「ところで相沢君、どうせヒマなんでしょ?」
 美坂姉が、質問というよりはそうに決まっていると確信のあるような調子で聞く。
 当たっているだけに、その部分についての反論は出来ないのだが。
 答えずに口をつぐむ事でせめてもの抵抗を――
「ねえ、このアタクシが寂しい相沢君を誘ってあげてもヨロシクてよ?」
「……誰だお前は」
「うっさいわね。ちょっとやってみたかっただけよ。似合わない事して悪かったわね」
「いや――」
 似合いすぎる。
 言いそうになって慌ててやめる。後が怖い。


 ……結局、無視するつもりが思わず返事を返してしまった。
「悪いけど俺はあんまりそんな気分じゃ」
「栞」
「失礼しますー」
 香里が名前を呼んだのとほぼ同時に、栞がいきなり後ろから腕に抱きついてきた。
 勢いよく。がし、と。強く。
 慌てる。
「お……おいっ!?」
「さ、行きましょ」
「はーい」
 動揺する祐一を他所に、香里はごく平然と出発の言葉を発する。栞は元気よく返事する。
 そして香里が歩き出すのに合わせて、栞は祐一の腕を全身で引っ張るように――というか引っ張りながら後に続く。
 ずるずると。

「……で、ここか」
 百花屋。この街に戻ってきて最初に覚えた店の名前かも知れない。
 お馴染みの喫茶店だった。
 とはいえ、一人で来た事は一度も無いが。
 祐一の向かいに、香里とやたらににこにこ笑顔の栞が席に着く。
「いらっしゃい、祐ちゃん、香里ちゃん、栞ちゃん」
 そこにメニューを持って登場する、いつも通りの店員。……いつまで経っても「祐ちゃん」だ。
「こんにちは」
「こんにちはー」
 香里と栞が異口同音に挨拶を返す。
 店員はウンウンと満足そうに頷いて、メニューをテーブルに置く。
 ………………
 ……そして立ち止まって、少し首を傾げながら、3人の顔を順番にぐるっと見渡す。
 最後に、祐一と目を合わせて数秒。
 人差し指を立てて口元に当てて。
 じーー。と。
「……浮気?」
 がごんっ。
 ……久しぶりに、この店内に木の鈍い音が響き渡った。
 まるで祐一がテーブルに頭からつっこんだかのような音が。
「違いますっ! 色んな意味で!」
 ばばっと素早く身を起こすと即座に反論しておく。
 と、香里が店員に向かって落ち着いて説明を始める――
「昨日から名雪は部活の合宿に行ってるんですよ」
「まあ、それで寂しくて――?」
「ええもう、相沢君たら見ていられないほど落ち込んでて」
「それで貴方達でなぐさめてあげようというわけね。偉いわっ。ガンバって♪」
「ちーーーーーーーーーーーーーーーーーーがーーーーーうっ!!!」
 机を叩いて叫ぶ祐一。
 気にせず薄笑いで店員と話す香里。
 どこまで本気か、やたらに楽しそうな店員。
 ただにこにこ笑顔を浮かべている栞。
 ……平和だった。
 ぜえはあ。
「……レモンティー、ホット」
 なんとか落ち着いて、とりあえずキリがないのは相手しないことにして、注文を頼む。
 そもそもこの店に来る予定も無かったのだが。
「イチゴサンデーを、彼に」
「待てぃ」
 さらっと注文した香里に、条件反射でツッコむ。
「寂しい祐ちゃんのために、なゆちゃんの存在を感じさせるための配慮なのね……優しいわね、香里ちゃん」
「いや感動してないで」
「もう、祐ちゃん。せっかく女の子がこんなにしてくれてるんだからちゃんと受け止めてあげなきゃダメよ」
「……いや」
「で、あたしは洋ナシのシャルロット」
「私はキャラメルパフェで〜」
「はぁい♪」
「……」
 やっぱり、すかっと流された。

「……で、だな」
 まあ、たまには食べてみるのもいいだろう。甘い冷たいクリームをスプーンですっくり口に運ぶ。
 朝から甘いものを連続で食べる事になるとは思わなかった。
 ちょっとクドい気もするが……なるほど、確かに美味しい。
 向かいでは香里がケーキを上品に、栞がパフェを元気よく頬張っていた。
「わざわざ俺を強引に誘った理由は何か?」
「あら冷たい態度。あたし達姉妹と一緒なんてこんな贅沢な経験めったにできないものよ? 普通」
「別にしたいとも終わったわけじゃ」
「ね、祐一さん。どうですか、名雪さんの味?」
 ぶふっ。
 ……咽て、クリームが喉の変なところにひっかかった。
 香里を牽制しているところに、予想外の方向からの攻撃だった。
「お前な……」
「実際どうなのよ。本当は寂しくて名雪の夢でも見ちゃったんじゃないの?」
「なん……っ!?」
 思わず反射的に体をびくりと震わせてしまう。
 ……後悔した時にはもう遅い。
「……あ」
「……あら、図星っぽいみたい」
「わー、祐一さんやっぱりそんなにも名雪さんのこと想っているんですね♪」
 香里は、言い出しておきながらも少し驚いたように。
 栞はほわほわ〜とあらぬところを眺めながら目を輝かせて。
 これはもう、否定しても遅い……だろう。
「それで? どんな夢なのよ?」
 来た。
 予想通り、そう来た。
 香里が、それはもう女王様ちっくな微笑みで祐一を注視する。
 そう言われると、もう思い出すまいと思っていた夢と、朝の事がどんどん蘇ってきて――例えば夢の中のあの言葉とか、あの場面とか、実際に触れたことのある名雪の体の感触とか――
「……お姉ちゃん」
「……そうね」
 もがいているうちに、美坂姉妹はなにやら短い言葉で頷きあっていた。
 栞がとろんとした目で、手を朱に染まらせた頬に当てる。
 嫌な予感。
「祐一さん……そんなにエッチな夢だったんですね……♪」
「ああ、可愛そうに名雪。夢の中とは言え汚されてしまうなんて」
「だあああっ!?」
 どれだけ顔に出でいたのか。
 どれだけそこから想像されてしまったのか。
 ぶんぶんっと強く首を振る。
 ばんっ!
「言っとくがしたのはキスまでだからなっ!!」
 思い切り、テーブルに手を叩きつけ……る……

「……」
「……」
「……あ」

「いや、今のナシ」
 香里と栞まで一瞬呆然と沈黙してしまった隙を狙って、真っ先に復活した祐一が言うが。
 もちろん、手遅れ。
「これは重大発言だわ……」
「キスまで、ってことはこの先もっと……♪」
「ああああああああああああああ」
 今回ばかりは完全に祐一のミス。言い逃れのしようもない。
 できるのは、ただ頭を抱えて俯くだけ。
「祐一さん……」
 ぽん、とそんな祐一の肩に置かれる手。栞の手だ。
 栞は少し間を置いて、ゆっくりとひとつ頷く。
「ギリギリまで妄想して思い切り溜めてから寝ると上手くいくらしいですよ」
「何の話だ!?」
「あと写真を枕の下に入れるとか、声を録音したテープを流したまま寝るとか――」
「そんなコツはどうでもいいっ」
「ふぁいとです!」
「ああ、もう……」
 やたらに気合十分の栞にぐったりと項垂れる。
 ……自分の経験で話しているのだろうか、と少し気にならなくもないが。
 もはやぬるくなり始めているサンデーをなんとか口に運ぶ。今は少しでも他の事をして気をそらさないとこの場にいられなかった。
「キスねぇ……」
 ニヤニヤと意地悪そうな笑みを浮かべながら見つめてくる香里の存在は極力気付かないフリをしつつ。


「恋の色は何色ですか?」
 全員がそれぞれ頼んだものを満喫して(祐一は自分で頼んでいないものを、しかもあまり味わえなかったのだが)、あとはゆっくりとおしゃべりタイム。
 一刻も早く逃げ出したいところだったのだが、そう簡単にこの2人が解放してくれるわけもなく。
 栞がなにやら本を読みながら、いきなりそう切り出したのだった。
「……何色と言われても」
「イメージでいいんですよ、どんな色のイメージを持っているかが重要なんですから」
「あたしは……紫かしらね」
「わ、お姉ちゃん、なんかオトナっぽいっ」
 とりあえず、香里が解答例を示す。まあ、この辺に何か意味でもあるのだろう。
 紫の恋って何なんだと思うが。
「そうだな……白、かなぁ……」
 純白。
 人間の感情の中でもっとも原始的で単純なものの一つとして。
 その感情自体はどこまでも自由である事の象徴として。
「ふぅん」
 ……香里が、じっと目を見つめてまた謎の笑みを浮かべている。
 また。
「やっぱり、名雪って名前からの連想なのかしらねぇ? 雪は白いものねー」
「そう来たか……」
 もちろんそういう意図は何も無かったとこれは断言していい。
 いいのだが、それを言って通用するかというと。
「白ってのはだな……何にもない色だろ? そして、どんな色にでも簡単に変われる色だ。人によってそこから淡いピンク色になったりブラックになったりごちゃごちゃと複雑に交じり合った色になったりするわけだ。だから俺は、最初は誰でも白だと思う」
「私も名雪さんのイメージカラーは白だと思いますよ〜」
「……だから名雪は別に」
 聞いちゃいない。
 結構いいこと言ったつもりなのに。
「そしてそんな純白の名雪を――相沢君は夢の中で汚しちゃったわけね……」
「だあああかああらああああっ!?」
 遊んでいる。
 今さら確認するまでもない事だが、香里はとーーーーーーっても楽しそうに笑みを浮かべていた。
 がっくりと、肩を落とす祐一。
「ったく。俺は”妹なんていないわ”なんて言ってた頃のちょっとミステリアス少女な香里が恋しいぞ……」
 思い起こせばあの頃からどこかからかわれていた気がしなくもないが。
 それにしても、ここまでオモチャにされることはなかっただろうに。
 祐一にとっての不幸は、栞という少女に関わってしまった事だったかもしれない。
「あら。あたしの方は今の相沢君も好きよ?」
 さらりと。
 香里は返すのだった。
 妖しい目で祐一を正面からみつめ、全身をちょっと乗り出して顔を近づけて。
「……お……え、あ、う?」
 祐一、混乱。
「わ、お姉ちゃんダイタンー。ここでいきなり告白なんて♪」
「って、そんなわけあるかっ! そういう性質の悪い冗談はやめとけっ……心臓に悪い」
 誘惑するような目に、正直言えばドキっとしてしまった事をなんとかごまかすように、驚いてドキドキしているだけだからな、と強調して心臓のあたりを手で抑える。
 ……顔が紅潮してしまうのは避けられそうもなかったが。
「あら……どうして冗談だと思うのかしら? 本気かもよ?」
 香里はまだ表情を変えない。少し真剣味を帯びているようにも見えるが――
 ぶんぶん、と何かを振り切るように顔を横に振る。
「本気だったらこんな場面でさらっと言えるわけないだろっ」
「……正論ね」
 祐一の言葉に、すっと身を引く。
 あっさりと。
 ちょっとだけ寂しそうに目を伏せ逸らしたのも、どこまで本気なのだかまるで分からない。
 ついでに栞も、むーっとつまらなさそうな目をしていた。
 実際、もしここにいたのが香里一人だったら自分がどう反応していただろうか――考えると、少し怖くなった。
「ま、でも、さっきの言葉でちょっと心動いていた事は名雪に報告ね」
「なんでだ!?」
 ケロっとまた不敵な笑みに戻って香里が言い放つ。
 そして、案の定、確かに少し誘惑されてしまった事はしっかりと見抜かれていた。
「何? 名雪にその事を告げると相沢君に何か不都合があるのかしら?」
 意地悪だ。
 知ってはいたが、意地悪だ。
「べーつーにー。言いたきゃ言えばいいだろ。どうせ名雪はそんな事興味持ったりは……しないだろ」
 言葉の最後に若干不安が表れるあたりが弱いということに、祐一自身は気付かない。
 というより、明らかに後半部分は蛇足であり、大きなミスなのだが――
 香里ははぁ……と呆れたようなため息をつく。
 栞も少し難しい顔をする。
「な、なんだよ」
「祐一さん……名雪さんのどこがそんなに不満ですか?」
 じっと、今度はいくぶんマジメな表情で。
「はぁ? いや不満なんて別に――まあ、もっと早く起きてくれとか、朝ご飯中に寝るなとか、寝ぼけていきなり着替えだすなとか、ことあるごとにイチゴサンデー奢らせるなとか、目覚し時計をなんとかしてくれとか……なくはないんだが。でもそれが名雪ってもんだし不満という程でもないし――体育の授業であれだけ張り切って動けるなら普段ももっとちゃんと出来るだろとかは思うけどな」
「体育の授業までよく観察してるわねー」
「……う」
 香里は、隙を逃さない。
 ジト目で軽く睨みつける。
 こほん、とひとつ間を置く。
「まったく。いい加減あんたも認めなさいよ。好きなんでしょ? 名雪のこと」

 そこが、核心。
 祐一は――さすがに正面きって言われて、動揺する。
「だから……俺は」
「好きでもない子が夢の中に出てきてキスまでするのかしら? それとも、誰でもいいの?」
「でも、たまたま近くにいた名雪が標的になってしまっただけかもしれないじゃいかっ」
「へえ――」
 ぞくり。
 香里がそのとき浮かべた表情は、何と形容したらいいのか。笑わない笑顔。
 ただ祐一はそれに圧倒され、口を詰むんでしまう。
「じゃあ、あたしでもいいんじゃない」
 ふふ、と薄く笑う。
 栞でさえもその様子には気圧されているようだ。目をぱちっと開いて姉の様子を見守っている。
「ねえ相沢君。あたしとキスしたいと……思う?」
「な……っ!?」
「夢に見るくらい憧れてるんでしょ?」
「……ば、バカな事言うな……って!」


 笑い飛ばせなかったのは、何故か、本当にどこまで本気なのか、香里の表情が真剣なものだったから。
 ゴクリ、と唾を飲む。
 そのまま雰囲気に飲まれて頷いてしまいそうな怖い迫力があった。
 実際のところ――したい、と思えてしまう自分もいるわけで。
 夢の中の名雪とのキスを思い出す。何の感触も今は残ってないけれど、実際にはきっともっと柔らかいに違いない。
 時間も経って夢の記憶は少しずつ薄れているが――
『祐一だけだよ』
 その声は。
「……したい、かもな。たぶん幸せな気持ちを味わえるだろうさ。でも、出来ない。絶対に。そこで終わってしまうから」
 返事の言葉は、自然に出ていた。頭で考えるより早かったかもしれない。
 その事に自分でまず驚いたが、同時に言葉に納得する。何が言いたかったのかを理解する。
 香里は素の顔に戻って、意外な言葉を聞いたというように2,3度まばたきをしてみせる。
 祐一は、続きをどう解説しようか頭の中で言葉を組み立てる。決して香里では悪いわけではないのだというフォローとか、それでもやっぱり出来ない理由とか。
 少しの間の後、口を開……
「それなら中間取って私とか?」
 かくん、とテーブルに伏せる。
 一気に力が抜けた。
 ……テーブルに頭をぶつけなかっただけ成長したかも知れない。
「何のどう中間取ったらそうなるんだ……」
「ツッコミどころはそこじゃないですよー」
「そこでいいと思うが。かなり」
 頭を抱えながら顔を上げる。
「で? 栞はどうなの?」
 どういうわけか香里は妹の発言に特に驚きもせず、純粋に興味がありそうな口調で改めて尋ねる。
 相変わらずこの姉妹の考える事はさっぱり分からない。
「あのな。香里がダメで栞がオッケーなんて理由はどこにもないっての。よーするにそういう事は……つまり、愛し合う相手がすることで……ただする事だけしたってその後が何にも続かないだろ」
 愛し合う、という部分で照れる。
 はー……と、香里と栞は同時に感心したようにため息をついた。
 それを見てちょっとスッキリした。
「やっぱり名雪じゃないと意味がないわけね」
「こういうのも操を立てる、って言うんでしょうか?」
 ごん。
 本日2回目。
 やっぱり慣れていても頭は痛い。

「……ってかさ、なんでお前らそんなに俺と名雪をくっつけたがるんだ?」
 なんかもー何を言ってもムダってカンジ? と若干諦めムードの祐一が呟く。
「相沢君がはっきりしないからちゃんと自覚させてあげようと思ってるんじゃないの」
「そうですよー」
「……俺がいつ、少しでも名雪のことを気にかけていると言った?」
「見ていれば分かるわよ」
「そうですよー」
「何を根拠にそんな事言うんだか……」
「名雪にも、絶対脈アリだって伝えてるんだけどねぇ……あの子も結構慎重だから」
「そうですよー」
「そうですかー……って、な、何ぃ!?」
 今さりげなくトンデモナイ事を聞いたような。
 いや、聞いたようなじゃなくて、聞いた。
 思わず声が裏返ってしまうほどに。
「ん? どうしたの相沢君?」
「どうしたのってっ! 名雪がなんだって!?」
「あらら慌てちゃって。気になる?」
 くすくす。
 ああ、意地悪だ。何度も思うが本当に意地悪だ。
 これが美坂香里だ。
 祐一は観念してがっくりと頭を下げる。
「……気になる」
「ふふ。素直でよろしい。まあ、難しい話じゃないわよ。名雪はね、7年間会えなかったイトコの男の子しか見てないみたいってこと。はっきりしない誰かさんと違ってね」
 ずががんばひゅんと。
 マシンガン連射を浴びたような衝撃を受けた。
 ……考えもしなかった。
「本当……か?」
「――相手のことを想っていると却ってそういうのは見えなくなるものかしらねぇ? あたしから見たら名雪も相沢君もすっごく分かりやすいんだけど。ねえ栞?」
「そうですよー」
 さっきからそれしか言わない栞。
 聞いているのだろうか、と不安にならないでもない。
 ……試してみる。
「……栞、ところで”よせあげ”ブラ使っているという噂は本当か?」
「違いますよー。ていうかそんな噂勝手に作る人かなり嫌いですー。セクハラですー。そんな人はターボ湯切り失敗して麺を全部三角コーナーにこぼしてしまえですー」
 聞いてた。
 ぴんち。
 ……じゃ、なくて。
「香里。……本当に、本当なのか? またからかって遊んでるんじゃないだろうな? もしそうだったらさすがに怒るぞ」
 さすがに動揺で声が上ずる。
 これで「うっそーん♪」とか言われたらどうしてくれよう。今まで届いた広告メール全部転送してヤル。
「ホントよ。全く、いつになったらお互い気付くのか楽しみにしてたのに……あたしの口から言う事になるなんてね」
「私はもう怒ってますー」
「それなら……それならそうと早く言ってくれたら良かったのに」
「はぁ? 何甘えてんのよ。あたしたちがいないと恋愛もできないのかしら?」
「う……」
「私、無視ですかー」
「確かに、その通りだ。名雪の気持ちなんて考えもしなかったな……」
 厳しい香里の言葉に、反論のしようもない。
 ただ、まさか、あの名雪がそんな感情を持っているとは想像できなかったのだ。自分だけがヘンな目で見てしまっているのかもしれないという罪悪感だけしか捉える事ができなかった。
 本当に、香里から言われるまで何も気付かないというのはどうかしている。
「それで?」
 香里は半眼でじと、と祐一を見据える。
「へ?」
 祐一はぽかん、と首を傾げる。
「今度こそちゃんと認めるんでしょうね。ここまで聞いたからには」



 時間が必要だった。
 まだ混乱の残る頭を抱えながら店を出て、二人と別れた。途端に夕方の静けさを実感する。あとはこの寂しい道を家まで帰るだけ。
 最後の栞の言葉が脳裏で繰り返される。
『――たまたま名雪さんが、って言いますけど、恋愛なんてキッカケはみんなたまたまですよ?』
 明確な理由があるほうがむしろ珍しい、と。言っていた。
 かなり気分は楽になったものだが、そう言われても、いきなり自覚できるものではない。
 本当に……名雪のことが好きなのか。
「……そういえば、恋の色の話って結局答えにどんな意味があるのか聞き忘れたな」
 とりあえずは、そんなどうでもいい事を思い出してみた。
 帰り道は、7年ぶりにこの街にやって来たときに比べて、暖かく体を包み込んでくれた。



「はぁ……相沢君、予想以上に天然ねぇ」
 帰り道は夕日に向かって歩く事になる。まぶしさにやや目を細めながら、二人で並んで歩く。
 栞は何かが楽しくて仕方ない、というようににこにこと微笑みながら。
「ね、お姉ちゃん」
「……ん?」
「お姉ちゃん、祐一さんの事好きって言ってたの……結構本気なんじゃない?」
 香里はぴた、と足を止めた。
 栞もすぐに止まった。
「はぁ? 何言ってんのよ。相沢君と名雪が潜在的ラブラブカップルなのはミエミエじゃない。あたしがそんな分の悪いの相手にするわけないでしょ」
「名雪さんの事が関係なかったら、本気なんだ?」
「……知らないわよ」
 すぐにまた、歩き出す。
 早足で。
「わわ」
 ストロークの短い栞は、かなり急ぎ足にしないと追いつけない。
「恋の色は、真っ赤なんだよ。情熱の赤。暖かい赤。そして血の赤。本当に好きなら血を見るくらいの奪い合いバトルなんてしちゃってもいいんじゃないかなぁって」
 小走りに近い速さで栞が必死に食いつく。その隣を香里が平静に歩いていく。
 そのまま100mほども進んで。
 また、唐突に足を止める。
「栞」
「ん、何?」
「……あんた、楽しんでるだけでしょ」
「うん♪」
 ぽか。
 深い青に染まりだした空に、気持ちいい快音が鳴り響いた。



Epiloge




 いつもは見ないテレビ番組なんかを見ていた。
 心理テストみたいなものだった。ちょっと強引すぎるんじゃ、と見ていて思う場面もあった。
 電話が鳴った。叔母が――もとい、”秋子さん”が出た。
 邪魔にならないようにボリュームを下げた。
「はい、水瀬です。――あら、名雪」
 ドキっとした。
 心臓が勝手に体から飛び出しそうなくらい跳ねた。
 テレビの電源を消そうとする……と、なんだか電話を物凄く気にしているのがバレるようで嫌だったからそのままつけておく。
 色々話していた。元気そうだった。
 合宿頑張ってね。ちゃんと起きられるように早めに寝なきゃダメよ。部長だからってムリはしすぎないで気をつけてね。
 会話が全部聞こえてくる。テレビの音などもちろん全く聞いていなかった。
 今すぐ受話器を奪ってしまいたい。
 このまま何ももう聞かないで立ち去ってしまいたい。
 相反する二つの欲求が同時に襲いかかる。何がしたいのか自分でも分からない。
「――ええ、ここにいるわよ。代わるわね」
 また。
 一瞬心臓が、血管が暴れた。
 どうやら選択肢は名雪のほうが持っていたらしい。
「祐一さん」
「……はい」
 にこやかに差し出された受話器を、ゆっくりと立ち上がって、左手で受け取った。
 何故か、妙に緊張してしまう。
 普通にしていればいいのだ。名雪は今日、香里たちと祐一の間でどんな会話が交わされていたかなど知らないのだから。
 受け取ると、仕事に戻りますね、と秋子はすぐに去っていった。
 ……明白だった。さりげない動作だが、話しやすいように気を使っていったのだ。
 受話器を恐る恐る耳に当てる。
「もしもし」
『あ、祐一〜』
 ぎゅ。
 名雪の声。1日ぶりだ。
 1日ぶりのはずなのに、まるで何年も――それこそ7年間くらいは聞かなかったように懐かしく感じられた。
 声を聞いただけでこんなに胸を締め付けられるなんて。
 何を今まで迷っていたのだろう、と思う。明らかだった。そう、香里に言われるまでも無い。
 明らかだったのだ。
『あのね。合宿の練習とってもきついけど頑張ってるよっ』
「……そうか。頑張れよ」
『あれ? なんか祐一、元気ない? 大丈夫?』
 誰のせいだと思ってるんだ。
 言いたくなったが、何も別に名雪のせいではないのは知っていた。
「いや、何でもない。名雪こそ元気か?」
『わたしは元気でやってるよ〜。遅くにミーティングがあるから明日朝が心配だけど』
 あとは、と。
 名雪は付け足す。
『祐一がいないのが寂しかったくらいかな……なんてね』


”恋の色は何色ですか?”


 一番何も無い純粋な色だから、白。
 どんな色にも変わることができるから、白。
 名雪の色。
 受話器を持つ手に力が篭った。じっとりと汗ばむ手。
 名雪のその言葉は、今聞くにはあまりにタイミングが良すぎた。効き過ぎた。
 何て言えばいいんだろう?
 ――俺もだ。
 言えるわけが無い。恥ずかしすぎる。だいたい名雪のほうもびっくりして引いてしまうかもしれない。
 いつも通り適当に、軽く流してしまえばいいのだろう。
 ……それにしても、この間を空けてしまったのがもう失敗だ。すぐにさらっと返さないと意味が無い。
 次々に言葉と対処法が浮かんでは消えていく。
 ごくん、と唾を飲み込む。
 混乱している。
 ほら、もう。
 頭の中が、真っ白。



FIN...




【あとがく。】

 久しぶりのSSでした〜〜〜
 中身ないクセにまたダラダラと長くしてしまいました…反省。シュン……

 とりあえず祐一くんを徹底的に悩ませてみたかったというお話でございました。
 着いてこれる方いたでしょうか……おろおろ
 
 また何か書くかもしれません♪
 そのときはお暇でしたらお付き合いくださいませ><
 そして感想めっちゃお待ちしております♪ もし感想いただけたら喜びの余り「木曜日」を「本曜日」って書いちゃいます!
 ではでは失礼しましたm(__)m