「香里、なんか勉強はこうしろっていういい方法があったら教えてくれ」
「そんなのあったらこの世に塾も予備校も必要ないわよ」
そりゃそうだ。



FIN.







































うそうそ。




香里お姉さんの受験講座♪

〜プロローグ〜




「なんだこりゃ………」
それを見たとき、祐一は声に出してそう呟かずにはいられなかった。
生徒指導室。そう呼ばれている部屋。普段は立ち寄る事は無い。
校内で大きな試験があった後のみ、興味のある人がここに集まってくる。
…今目の前に張られている、校内順位表を見るために。
祐一は転校してきたばかりなのでこの順位表を見るのは初めてだ。上位に並ぶお馴染みの名前も香里以外は誰一人として知らない―――
(それにしても香里、ほとんどの教科で上位じゃないか…凄いな。数学なんて1位………ん?)
順番に上から見ていた途中、数学のところで目が止まる。
もう一度じっくり見てみる。
さらに見てみる。
何度見てもそこに書かれている数字が変わるわけがなく。

順位名前得点偏差値
美坂香里96101.3
八事武5466.9
川名真樹5265.2
鶴舞彰5265.2









(………101.3?)
偏差値が100を超えるなんて話、聞いたことが無い。
学年2位が54点しか取れない試験というのがそもそもマトモじゃないのだが、それでほぼ満点を取ってしまう香里とは何なのか。
普段教室で普通にボケツッコミしている(←してない)香里の存在をふと遠くに感じた祐一であった―――

ちなみに総合では当然のように香里がダントツで1位だった。



「なんだこりゃ………」
それを見たとき、また祐一は声に出してそう呟かずにはいられなかった。
さっきの順位表の隣である。
何気ない気持ちで3年生の方も覗いてみたのだ。
先程とはまた微妙に違う意味で衝撃的な結果がそこに並べられていた―――
「佐祐理さん………全教科1位かよ…」
というか、全教科ほぼ満点である。名前の出ていない科目もあるが、選択科目のパターンを考えると、受講している科目は全て1位というのが分かる。
国語、英語、数学、化学、生物、世界史。完全に独占だった。
「俺の知り合いって、何だ?」
普段屋上前で普通に新婚さんごっことかしていた(←たまに)佐祐理が、後光をまとって降臨してくる光景が見えた気がした。
残念ながらもう卒業式も終わってしまったので、これからは会う事もほとんどないだろうが…

「そういえば佐祐理さん、どこ受けたんだ?」
どう考えても受験生という感じでは無かったのだが。あるいは受験も全て終わった後だったのか。
そういう話はした事が無かったので来年からどうするという事も何も知らない。



「というわけで、俺に勉強を教えてくれ」
「というわけ、の意味が分からないわ」
「そこをなんとか」
昼休みに祐一は唐突に切り出した。もちろん、香里にあやかって自分も成績急上昇これでクラスの人気者だネうっはうは作戦を実行するために。
しかし香里は渋い顔して祐一を撥ね付ける。
「勉強ってのは結局自分がしないと意味がないものなのよ。教えてもらうっていう態度も重要だけど、それだけじゃ全然身につかないのは分かってる?」
「おう。今分かった。だから教えてくれ」
ばたっ、と机に突っ伏す香里。
「あんたね………」
「あ、香里。わたしもちょっとだけ教えて欲しい事があるんだけど…いいかな」
「もちろんよ。あたしたち親友でしょ?」
「………」



屋上前の階段まで来てみた。
当然誰も居なかった。



「というわけで香里、俺もお願いします」
「あんた今どこ行ってたの…?」
「突然教室飛び出すからびっくりしたよ」
「まあ相沢の行動が突飛なのは今に始まった事じゃないけどな」
一人増えていた。
「そういう事聞くなよ。男心ってものが分かってないな、全く」
ふっと意味も無く髪をかきあげてみる。
程好く日光が反射して美しく輝いた。
「で、勉強会はいつ行われるんだったか?」
「………勉強会?」
「おう」
「誰が?」
「香里と名雪と俺だな」
「いつ?」
「俺はいつでもいいぞ」
「どこで?」
「香里の家を希望」
「ちょっと待て相沢祐一っ」
順調に進んでいた会議に北川が割り込んできた。
ぐいっと祐一の制服の襟を掴む。
「お前転校早々に美坂のこと名前呼び捨てで呼んで今度は家に押しかけかっ」
器用にも小声で叫ぶ。香里に聞こえないようにだろう。
「…北川も一緒に行くか?」
「行く」
和解した。
「ということで北川も参加することになりました」
「なんなのよ、あんたたち………」
香里は大きくため息をつく。
ぐったりとしていた。
「ちょっと祐一、それは勝手だよ〜。香里にも都合があるんだから」
反応の遅い名雪が今になって非難する。
うんうんと、香里が頷いてそれに乗りかかる。
「だから、ウチでいいよ。部屋も一つ空いてるし」
香里がまたがくっと肩を落とす。
「やることは決定してるのね………」
「あれ…もしかしてダメだった?」
「ああ、いいわよ別に。あたしがみんな面倒見るって話じゃなきゃ―――あたしの家も使っていいから」
その言葉を聞いた男二人の目がキランっと光った。
(香里の家………ふふ…)
(ついに―――ついにこの日が…っ!)
初っ端から本来の目的を忘れている二人だった。
いや北川は本来の目的がそっちだろうけど。



第1回美坂家勉強会が開かれるに至る経緯は、そのまま以上の通りである。



続く―――



【なかがき】

もともと「Presto」という書きかけで終わったSSがありまして、その一部に4人で勉強しているというシーンがありました。
なんとなくこの部分だけで一つ書こうかな………と…

どれくらいマジ勉強にしようかまだ若干悩んでますが、基本的には遊びのほうがメインになるはずです。なるに決まってます(爆)
まあ気長にやっていこうかと………連載苦手なのは自分でよく分かってますし…


というところで今回の課題(え?)
今回の数学の試験で0点を取った場合、偏差値はいくつになるでしょーか?
正解者には………何もありません(爆)
いや、まあ、そういうの好きな人は暇つぶしにでもどうぞ(笑) 有効数字は小数点以下1ケタというコトで♪